模型航空機教育教程
 当時を偲ぶために旧仮名使いのままの原文で紹介します

ヒカウキ=ヒコウキ
  旧仮名使いではこんな言い方をしていました。
  テフテフ=チョウチョウ
要旨
 中厚紙ヲ主材料トスル簡単ナル切紙滑空機ヲ作ラシメ
 且其ノ飛バセ方ヲ指導シテ滑空状態ヲ観察セシメ以テ
 航空機ニ関スル親ミト理解トヲ誘起セシム。

 飛行指導の一部
 1.飛バセ方ハ水平尾翼ニ少シク負ノ取付角ヲ附シタル
  後主翼下胴体ヲ持チ水平ヨリ稍々下向キニ適度ノ力
       ヲ加ヘテ軽ク押シ出ス様ニナス。
  児童ハ一般ニ過度ニ力ヲ入レ或ハ上方ニ向ケテ投
    グル傾向アルヲ以テ之ヲ矯正シテ正シキ飛バセ方ヲ 
    授クルコト。

 要旨
 「キビガラ」、中厚紙ヲ主材料トスル簡単ナル小型滑空機
 ヲ作ラシムルト共ニ特ニ全体ニ重心ヲ定位置ニ合セル
 方法ヲ教ヘ且其ノ飛バセ方及調整ノ方法ヲ指導シ以テ
 航空機ニ関スル親ミト理解トヲ深カラシム。

 「キビガラ」=トウモロコシの茎の中のスポンジ状の芯を
 乾燥させ、着色をして工作材料として使った。

 飛行指導の一部
  機首ニ古釘ヲ挿入セザル場合(重心後方ニアル場合)
 機首ニ古釘ヲ挿入シタル後長キ紙ヲ巻キタル場合
 (重心前方ニアル場合)ニ付き実験セシメ最後ニ機首
 ノ錘ヲ加減シテ重心ヲ主翼前縁ヨリ翼弦長ニ三分ノ一
 ノ位置ニ合セテ其ノ滑空状態ヲ比較観察セシメルコト。    

要旨
  「竹ヒゴ」、細木、薄紙ヲ主材料トスル小型滑空機ノ工作
 法ヲ授クルト共ニ之ガ滑空法ヲ指導シテ各部ノ調整方法ヲ
 知ラシメ正シキ滑空ニ必要ナル条件ノ大要ヲ会得セシム。

 製作指導の一部
  錘ハ古釘ヲ「キビガラ」中ニ頭部マデ挿込ミテ作ル。
 之ヲ機首ノ下側ニ糊着ケシ糸ニテ縛ル。
  主翼ハ胴体ノ基準面ニ取付角ヲ付シテ取付クルコト。
  取付角ヲ付スルニハ前縁ノ取付位置ニ当タル部分ニ
 枕木ヲ載セ生半紙ヲ巻キテ糊付ケトシ其ノ上ニ前縁ヲ載セル。






要旨
  「竹ヒゴ」、細木、薄紙ヲ主材料トスル普通ノ中型滑空機
 ノ製作ヲ教ヘ一層進ミタル工作法ヲ授クルト共ニ之ガ滑空
 法ヲ指導シテ既習ノ知識ヲ更ニ明確ナラシム。

 飛行指導の一部
  本滑空機ハ室内又ハ風無キ屋外ニテ滑空セシムルヲ
 可トスル。
  一見形ハ正規ナルモ真直ニ滑空セズ左或イハ右ニ方向
 ヲ転ズル傾向アル場合ハ垂直尾翼ノ前縁ヲ其ノ方向ニ向ク
 ル如ク少シク捻リテ修正スルコト。一回滑空セシムル毎ニ形
 ノ狂ヒヲ検シ必要ニ依リテ調整スル様指導スルコト。 


 要旨
  「竹ヒゴ」、細木、薄紙ヲ主材料トシ「ゴム」動力ヲ有スル
 普通ノ小型飛行機ヲ製作セシメ其ノ工作法ヲ授クルト共ニ之
 ガ飛行法ヲ指導シテ動力飛行ト滑空トノ差異ヲ体験セシム。

 製作指導の一部
 「プロペラ」軸承ハ「コ」ノ字型金具又ハ木製其他適当ナル
 モノヲ用ヒ胴体機首ニ附ス。
 軸承ガ「ゴム」ノ張力ニ依リ後退セザル様ニナスコト。
 其ノ方法ニ例次ノ如シ。
 細木ノ軸承金具ニ接スル部分ヲ第一図ノ如ク細木上面ト平行
 ニ少シク削リ取リテ段ヲ付ケタル後「コ」ノ字型軸承ヲ当テ
 糸ヲ並列ニ堅ク巻キテ結ブ。結ビ方ハ第二図ノ如クナスコト。
 木製ノ軸承ヲ用フル場合ニハ其ノ上面ニ段ヲツケテ機首
 木口ニ当テ糸ヲ巻キテ固定スル。
 糸ヲ巻キタル部分ニハ糊ヲ塗リテ固メルコト。 



ここからは現代文にします
要旨
  既習の知識を応用し、各自の創意工夫を加え「竹ヒゴ」、
 細木、薄紙を主材料とし、「ゴム」動力飛行機を設計、製作
 を通して「プロペラ」の工作法指導し、「プロペラ」の機能を
 理解させる。

 飛行指導の一部
  調整法の大要は以下のようである。
 ・形は設計図通りにであるか。
 ・重心位置と主翼位置との関係が正しい位置にくなるよう、
 主翼を前後に移動しる。飛行中機首を上(下)にする傾向
 がある時には、主翼を後(前)方に移動して修正するととも
 に、水平尾翼の取り付け角を正(負)の方向に加減する。
・横滑りの傾向があるものは上半角を適当に増大させる。
・「プロペラ」の反動力により左旋回の傾向のあるものは
垂直尾翼をねじり、取り付け角を増加させて調整する。

 要旨
  「キビガラ」、中厚紙を主材料とする串型、鴨型、無尾翼型
 の滑空機を作り、飛行させることにより異型滑空機の釣合、
 安定に付て知らせ、児童の創意を喚起し航空機に関する
 興味と理解を一層増加させる。

 飛行指導の一部
  重心の位置、取り付け角を変化させるに従い、滑空状態が
 変化することを知り、良好なる性能が発揮できるまで調整を
 行う。
 ・どのような型の滑空機も正面より見て、翼を左右均等にな
 るようにする。
 ・重心を図面上の位置を中心に、前後方向に移動さ
 せると共に、前方翼の取り付け角を加減する。






要旨
  「タケヒゴ」、細木、薄木板、薄紙を主材料とし、堅牢で
 軽量な両面張翼の滑空機を製作すると共に、定盤を使用
 しての工作法を指導し、高揚出発法を指導し団体訓練を
 を徹底し、大気中の気流特に上昇気流、下降気流の存在
 を知らせる。

 飛行指導の一部
 高揚出発法の指導は次のようである。
 ・高揚出発を行う前に必ず手投げにて滑空試験を行い
 調整をしておくこと。
 ・高揚出発法は曳行法にて行う。曳行には曳行索を使用し、
 索の長さはおよそ50メートルの凧糸の一端に環状の金具を
 付け、近くに目印になる布きを付ける。索の長さは場所の
 広さにより適当に加減する。

要旨
  細木、薄木板を主材料とし「ゴム」動力を有する大型
 飛行機の部分品を分業により精密に製作し、各自定盤
 を使用して正確に組立て、実物飛行機製作法の一端
 を理解させる共に分業の意義を体得させる。

 製作指導の一部
 胴体の組立
 ・4本の縦通材をあらかじめ図面の様に曲げ、其の一端
 を機首材に接着剤を塗り細釘を打ち、先端に近い部分を
 糸で巻いて固定する。定盤上置いた設計図に胴体背面を
 合わせ、機首材の下側に厚さ5ミリメートル、長さ30センチ
 の細木をはさみ、別の細木を用いて上部縦通材の第一枠
 前方の位置に渡し、両端を釘を使って定盤に固定する。
 ・次に上部縦通材を定盤上に釘を打って抑え、枠、尾部材
 を挟む。下部縦通材は上より押さえて枠に当て尾部材に
 固定する。 

要旨
  「竹ヒゴ」、細木、薄木板を主材料として大型滑空機を
 共同作業により製作をして、その機構を理解させるとよも
 に製作並に高翼出発訓練を通して共同一致の精神を
 啓培し団体訓練の徹底ヲ期する。

 飛行指導の一部
 1.滑空試験法、調整方法、高揚出発法を指導する。
  滑空試験は疾走出発法によるものとする。
 正しく風邪に向かい右手で機体の重心付近を軽く支え
 疾走に移る。速度が増すに従い揚力を生じ機体の重量が
 減少する。この時手を静かに離すと滑空を始める。この
 出発法を疾走出発法と言い特に重量が大きく、速度が大
 きい滑空機に適している。
 本機を高揚出発させる際に使用する曳行索は、六年生教材
 のものより長いものを使用すること。
 2.性能試験を行う。
  滑空機の性能のうち滑空比を測定するには、無風の時の
 滑空機固有の対気速度、滑空比を保つため一定の高さより
 出発させ、その飛行距離を測定し、飛行距離と高さとの比を
 求める。この場合水平尾翼又は主翼の取付角を変えて最良
 の滑空比を求めるようにする。
  沈降速度を測定するには、一定の高さより出発させ、その
 滑空時間(秒)にて高さ(メートル)を割った値を出す。この場合
 水平尾翼又は主翼の取付角を変えて最小沈降速度を求める
 ようにする。