岩の原葡萄園の創業者・川上善兵衛は、慶応4年(明治元年、1868年)、新潟県上越の地に生まれました。 勝海舟を師と仰ぎ、その薫陶を受けた善兵衛は、「岩の原」の地名が表す通り、石だらけで痩せたこの地に暮らす農民の救済のため、 師譲りのチャレンジ精神で、ぶどう栽培、ワイン醸造の事業を興したのです。明治23年(1890年)、善兵衛若冠22才のときでした。 しかし雨の多い日本では醸造用葡萄の栽培は困難を極めたため、善兵衛は欧米から自費で多様な葡萄の苗木を取り寄せて品種改良に努め、 病害虫に強く、日本の気候風土にも適したアメリカ種葡萄と、品質的に最ものぞましいヨーロッパ種葡萄を品種交配し、 今日わが国の醸造用の代表的な葡萄品種となっているマスカットベリーAやブラッククイーン、ローズ・シオターなどの優良品種を生み出しました。 また、醸造面では本邦初の密閉醸造や、越後名物の雪を雪室(ゆきむろ)で秋まで貯蔵し、ワイン醸造時期に冷却に用いることで、 当時としては極めて珍しい低温発酵を可能にし、飛躍的な品質向上を成し遂げ、本格的国産ワインの礎を築き上げました。 そうした功績から、善兵衛は「日本のワイン葡萄の父」と呼ばれています。