仲仙寺の背後にそびえる経ヶ岳は、慈覚大師によって山頂に法華経を埋経し、開山」した。 こうした出来事は、当寺の日本人にとって重大事であり、それまでの山は信仰対象でこそあったが、 開かれたり、踏破されたりするようなものではなかった。 また大師は経ヶ岳の山頂の霊木から観音像を掘り出したと伝えられているが、これも樹木への敬虔な信仰心を 持っていた日本人にとって、仏教の新しさや呪力に衝撃を受ける出来事だったであろう。仏教はそれまでの 日本人が抱いていた山そのものや木そのものに対する信仰心のエネルギーを、山や木に象徴される世界や、 さらにはその背後に秘められている宇宙の真理へと人々をいざなったと思われる。 慈覚大師が経ヶ岳でして見せたことは、山へ入るということが、単なる登山ではなく 自分自身の心の山頂へと魂の登攀をすることであり、法華経に説かれる永遠の真理と 私たち人間の一体化を目指す試みだったと思われる。 御詠歌 はるばると 登り向へば仲仙寺 いつも絶えせぬ松風の音 堂内には多くの仏像が安置され、天井には大きな龍が描かれ、奉納額も大作が多く納められている