念仏聖であった弾誓上人は、自ら建立した寺をその名も阿弥陀寺としながら、 本尊を観世音菩薩としたのだろうか。上人は念仏聖の先行者である一遍上人と同様に熊野で霊験を得ている。 この熊野的な阿弥陀信仰は他の浄土教と違って弥陀一仏に徹するのではなく、古来からの神仏混淆の念仏を試みたというが、 小さな石の観音菩薩の前で念仏を続けながら、弾誓上人はどんな浄土を見つめていたのだろうか。